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アロマセラピー 化学をとるか芸術をとるか

香りの話

私が生まれて初めて精油を手に取ったのは、いまから20年以上も前のこと。

当時高校生だった私は、父が成人式の振り袖のためにと用意してくれていたお金を振り袖を諦める条件で前借りし、1ヶ月かけて欧州9カ国を巡るひとりたびの真っ最中でした。

精油との出会いは旅の途中に立ち寄ったイギリスはロンドンのコベントガーデンにある小洒落たハーブのお店でした。

精油をまったく知らなかった私には「小さな瓶になにやら濃い液体が入っている」という印象でした。

興味本位で鼻を近づけると、目に見えない拳が鼻から後頭部に向けてどかん!と突き抜けるような衝撃と、一瞬ふっとどこか別の次元に連れて行かれるようなめまいを感じたことを覚えています。

いまでこそ様々な香りの精油とともに暮らし、それが当たり前になっている私ですが、生まれて初めて嗅ぐフレッシュな精油の生きた香りに、まだ10代の若い細胞が頭のてっぺんから足の爪先にいたるまで一気に反応したのだと思われます。

日本で誰もが手軽に精油を買えるようになったのはそれからもう少しあとになってからのことだったと思うのですが、それでも最初は、精油を扱うお店もメーカーも種類もとても限られていました。

世界中の個性豊かな様々なメーカーの精油を好きに選んで購入できるようになったいま、精油を取り巻く環境も豊かになったなあと感じます。

空前のメディカルアロマブーム

さて、考えてみたら当たり前のことながら、ついつい見過ごされがちなのが・・・同じ名前のラベルがついた精油でも、そのもととなる植物が栽培された場所、収穫された年、蒸留した会社、販売するメーカーなどでは全く香りが異なるということです。

なぜだと思いますか?

これは精油が人が栽培した農作物から作られているから。

蒸留されてみな一律に同じ形の瓶に詰められ、植物という目に見える形を失ってしまうと、精油が生きた農作物から作られたものなのだということはどうしてもイメージしづらくなってしまうのかもしれませんね。

昨今の健康ブームに後押しされて、人々の関心はより効率的に薬理効果を求めるいわゆるメディカルアロマに集まっています。

アロマセラピーを取り入れている医療の現場やスポーツ、リハビリの現場などでの体験談などにも後押しされ、いまや空前のメディカルアロマブームが起きているといいっていいでしょう。

ところがこうした盛り上がりと同時に、壁にぶつかる人もでてきました。

アロマセラピーの効果が期待したほどではなかったといって、せっかく手に入れた精油を放り出してしまう人たちも数多くいます。

香りの実体験の欠如

壁にぶつかってしまった人たちは、早々にアロマセラピーそのものに対する関心を失ってしまう現状があります。

なぜでしょう?

そうした何人かとお話をしていくうちに、ひとつのおもしろい現象がみえてきました。

まず最初に気付いたことは、彼らの多くが「アロマセラピーを理解したい、使いこなしたい」という強い熱意を持っていたという点です。

その多くが、アロマセラピーに関する書籍やネットで情報収拾をしていました。

そしてそこに書かれた精油のはたらきや薬理効果、一緒に使うと相性がよいとされる精油のチャート、香りの属性などに熱心に目を通していました。

ところがこんな熱心にアロマセラピーに取り組んでいるのに、彼らにはひとつ、共通して大きく欠けていた点がありました。香りの実体験です。

例えばティーツリーが抗菌作用の強い精油だとは知っていても、ティーツリーはどういう香りですか、その香りを嗅ぐとあなたの心と身体はどのような反応をしますか、と問われるとイメージが沸かないのです。

他の精油に対しても同じような質問をしてみましたが、薬理効果やその作用に関しては教科書通りの答えが出てくるのに、香りに対するイメージはどれも稀薄であるという印象でした。

私はこの現象を、精油を頭で考えることから入ってしまったために、「香りを楽しむ」というアロマセラピーのもっとも基本的なステップを未踏のままにしてしまったことが原因ではないかと考えています。

嗅覚と思考は脳の中では対極ともいえるエリアで処理されます。

アロマセラピー とはつまり、香りのセラピーです。

みな最初は「香り」という、文字ではあらわしきれない「感覚に訴えるもの」に魅せられて精油を手に取ったはずです。

それなのに、肝心な香りを楽しむことをしなかったら、精油を使う意味さえぼやけてしまう気がするのです。

精油を買ってみたけど使いこなせないまま古くなって捨てちゃった、という人の大半は、ここに原因があるように思います。

化学か芸術か

さて、さらにアロマセラピー を語る上でもうひとつ重要なことをお話しします。

アロマセラピーには大きく分けると2つの側面があります。

  • 精油を成分から考え薬理効果や禁忌などを踏まえて考察する化学的な側面
  • 香りや植物の持つ意味やメッセージなどから読み解くアーティスティックな側面

このふたつは相反するようでいて、実は表裏一体の切っても切り離せない関係性にあります。

精油を扱う上では、最低限の化学に関する知識は不可欠であることに変わりはありません。しかし同時に、精油が私たちの肉体、精神、魂のレベルに働きかける側面も、また無視できない重要な要素です。

つまり、私にとっては、このふたつのどちらが欠けてもアロマセラピーは成立しないものなのです。

というわけで。

とことん香りを楽しむワークショップを開催します。
日時は2015年5月11日、13:15〜16:00まで。
会場は横浜市石川町。

当日は、アロマセラピーでよく使う代表的な何種類かの精油を、4つの会社から取り寄せ実際にそれぞれの個性を楽しむほか、香りが人の脳と身体、スピリットにどう働きかけるかを理解し、精油がもたらすパワフルな効果と大きな可能性についてシェアする予定です。

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