二十四節気をはじめ日本の季節の行事や風習は中国から伝わり定着したものが少なくありません。
1月7日にいただく 春の七草 もそのひとつ。
春の七草、意外にもルーツはスープ
春の七草を紐解いてみますと、はじまりは中国の唐の時代にまでさかのぼるようです。およそ630年代といいますから日本の飛鳥時代でしょうか。1月7日に7種の野菜をスープで摂ったのが始まりだそうです。
その習慣は平安時代に日本へ渡り、宮中行事として広がりました。このときにスープからお粥に姿を変えたのが、日本での七草粥のルーツになるようです。
しかしまだこの頃には、七草には別段決まりはなかったといいます。
七草の種類がいまのようにいわれるようになったのは、室町時代の公家でありまた学者で歌人でもあった四辻善成(よつつじよしなり)が以下のように詠んだことがきっかけだそう。
せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ
すずな、すずしろ、これぞ七草
なるほど。
仮にそのとき四辻善成さんが 蒲公英(ほこうえい)と詠っていれば、たんぽぽが春の七草の一つになっていたのかも。
ならばもっと自由に自分に合った七草を探求してみる、というのも面白いかもしれませんね!
さて、春の七草粥は江戸時代になると庶民の生活におりてきて、おせち料理などとともに日本の文化として定着しました。いまでも地域や家庭などによって内容に違いはあるものの、やはりこれを食べて区切りをつけないと正月が終わらない!というおうちも多いのでは?
七草の薬効
さて、せっかくですから薬膳管理師としての看板を持ち出して(笑)、四辻善成さんの詠まれた春の七草を、中医食物学的観点から解説いたしますね。
春の七草には・・・
- せり 熱を冷まし、炎症を抑える
- なずな 胃腸を整え余分な水分を流す
- ごぎょう 熱を冷まし咳を止める
- はこべら 胃腸を整える、血を巡らす
- ほとけのざ 痛みを止める
- すずな 胃腸を整える、解毒、消化促進
- すずしろ 消化促進、痰を切る
などの薬効が期待できます。
ふむ。
邪を払う、という目的で挙げられているのだとすれば、デトックスにはうってつけの食材ばかりです。
過食で胃腸が疲れて働きがいまひとつのようなときもぴったりですし。
ただし、あくまでも食材で薬効は穏やかとはいえ、体が冷えたり弱っているときはあえて摂りたくない食材もちらほら。
体が疲労し滋養が必要なときは、お粥の量を増やして、せりやごぎょうは思い切って控えるという工夫もアリだと思います。
私ならさらに補気薬のキノコや豆類を加えるかなあ。
ただしそうなると、もはや「草」ではないのですが・・・。伝統的な七草粥をそのまま楽しむのももちろん素晴らしいのですが、自分の体調や気分に合わせて献立施膳する春の七草、ぜひおすすめしたいです。
その発祥はスープであったことになぞらえて、いっそお粥にこだわることを手放せばもっと気軽にできますよね。