前回は、心気が盛んとなって崩れた五行バランスをどのようにして整えていったらいいでしょう、というところでお話を終えました。
当然ながら、明らかな病気の兆候が現れている場合は医療機関へ。
それ以外の、日常の生活を見直すことで改善できるレベルのものは、食べるものと調理法を工夫することで穏やかに立て直しをはかっていきましょう。
胃腸を健やかに(健脾)
さて、そんなわけで気温が上がり、心気が旺盛になり水が干上がり胃腸が弱って脚がむくんでいたんでしたよね。
一体どこから手をつけたらいいでしょう?
やはり、バランスを崩すに至ったきっかけでもある「心気の暴走」を鎮めるところから!
・・・といいたいところですが、意外にも最初に手をつけるべきところは胃腸の立て直しなんです。
ここから手を付ける理由は2つあります。
まず、循環器系と消化器系では消化器系の方が深いところにあり(少し難しい言い方をすると、心と脾は相対的に陽と陰の関係にあるとされているため)、病はまず深部から癒すべしという中医学独特の考え方に基づく理由。
ふたつめで、かつ最大の理由は、薬膳の基本的理念に基づくもの。どんなに身体によいものとされるものを摂っても、食べ物を受け入れる消化器系が本来の働きをしてくれなければ、本末転倒だからです。
食べる物は身体をつくる基本。そのうえで、身体を作ってくれる食べ物を受け入れる消化器系を整えることは基本中の基本、という考え方です。
消化器のシステムをまず整えておくことで、このあと続いて摂る心気の鎮静と水分を補給するための食材の受け入れもスムーズに行うことができるというわけですね。
胃腸を健やかに保ち、湿を取り除いてくれるとして知られる食材は以下のものがあります。
玄米、はとむぎ、きゅうり、冬瓜、とうもろこし、茄子など
熱を冷ます
つぎに手を付けるべきは熱を冷ますこと。
もともとはここが発端で同時多発的に体調を崩しているわけなので、すみやかに手を打ちましょう。
加熱しすぎた心気を鎮めてくれる食材の代表格は、これからが旬の野菜や果物たち。
よく知られた話ではありますが、沖縄の郷土料理ゴーヤチャンプルーは暑い夏を乗り切るにはほんとうにうってつけの料理です。
ゴーヤは食材の中でも数少ない寒性に属し、解毒の働きもあって体内の余分な熱を効率的に冷ましてくれるし、豆腐も同様に熱を冷ましながら解毒し、また粘膜の乾燥を潤す作用もあって水分不足でカラカラの身体にはありがたい存在です。
また、鶏卵の白身にも同様に熱を冷まし解毒をする作用があるとされているほか、豚肉は夏に弱まりがちな気力を補いながらも、暑さで崩れた陰陽バランスを整えてくれる頼もしい食材です。
フライパンひとつで手軽にできて、いいとこづくしの理にかなったお料理です。
ところで、食材の冷やすという効果ですが、体内の余分な熱を排出する、という意味で使っています。
氷水のように物理的に冷やすわけではないので神経質になることはありませんが、真夏でも、例えばクーラーの当たり過ぎで身体の深部まで冷えを感じるようなときはむしろしっかり暖めたいので、そういうときは積極的に摂る必要はないと思います。
そのほかにも、熱を冷まして身体を潤してくれる食材には以下のものがあります。
アスパラガス、昆布、わかめ、きゅうり、じゅんさい、みょうが、レタス、セロリ、冬瓜、梨、パイナップル、バナナなど
調理は穏やかに
上記の食材はあまり手間のかからない調理法(お湯でさっとゆがく、スープにするなど)でいただくのがおすすめです。
油で揚げる、焼く、長時間煮込むという料理は、特に胃腸に負担のかかりやすい夏場には不向きかもしれません。
もっとも夏は暑さもあって長時間キッチンで火を使う料理は遠慮したいですから、理にかなった考え方ではありますね。