先週のある日のこと。
週に一度から二度のペースで通ってくださるクライアントへの、60分のセッション中のことです。
とても穏やかな時間が流れていました。
クライアントの深くゆったりした呼吸にあわせて私も軽い瞑想状態に陥りながら、後頭骨のあたりに片手を添えて頸椎の具体を確かめるように四指を滑らせていました。
突然、眠ってらっしゃるとばかり思っていたその方がすーっと目を開けて、歌うような穏やかな声で
「あなた、なにか音楽をやってらっしゃるかしら?」
とおっしゃいました。
突然のことに少々うろたえつつも、高校生くらいまでピアノ漬けの毎日だったこと、いまでもときどき思い出して軽い練習曲を弾いたりすること、趣味のロックバンドやジャズバンドでいくつかの楽器を遊んだことがあること、などをぽつぽつとお話ししましたら、その方はまどろんだようなうっとりした声で
「ああ、やっぱり・・・ずっとそんな気がしていたのよ」と。
そしてまたすうっとまどろみの中に戻っていかれました。
オイルトリートメントなどのボディワークのテクニックは、折りに触れて様々なものに例えられます。
繰り返しのストロークは寄せては返す波のようだし、パラパラと指先で筋肉の繊維をつまびくようなテクニックは雨だれのようだとも。
それと同時に、私は常々、オイルトリートメントなどのボディワークと音楽を奏でることは、とてもよく似ているとも思っていました。
流れる主旋律とそれを華やかに彩る装飾音、音の強弱、テンポの緩急・・・それらは毎回、クライアントひとりひとり違うのですが、ときにはクライアントごとに自分の中に流れてくるメロディーを、明確に意識することもあります。
その方はセラピーを受けながら、私の手を通してそんなことを感じてくださったのかもしれません。
感動すると同時に、身体にじかに触れてセッションすることの意味について、あらためて深く考えさせられました。
自分の中に常によい旋律を流し続けることができる、そんなセラピストでありたい!
そんな思いをあらたにしたできごとでした。